アンのゆりかご

アンのゆりかご―村岡花子の生涯―(新潮文庫)

アンのゆりかご―村岡花子の生涯―(新潮文庫)

朝ドラ「花子とアン」の原案です。村岡花子さんの孫がまとめた村岡花子さんの人生。文庫版が4/4発売であることをアンマニア(?)の方に教えていただいて、Kindleでぽちっとしておいたら、4/4に降ってきました。1日で読み切れる感じでしたが、もったいないのでちょっとずつ読みました。

で、感想はというと「花子とアン、どうしてこうなった……」。故郷である甲府の地域振興のため……かどうか本当のところはわかりませんが、ドラマでは甲府に実家がある設定にし続けていて、原案では花子が5歳のときに甲府から品川に引っ越ししてしまっています。父親が長子(長女)である花子に高等教育を受けさせたかった理由についても、原案では非常に納得できるものでしたが、ドラマでは花子の上に兄がいて、“なぜか”父親は長子である兄をぞんざいに扱い、2番目の花子をかわいがって、かなり無理矢理な流れで東京の女学校の寄宿舎に入れます。花子の才能に入れ込んで……という感じであればまだ近いんですが、ドラマの展開は花子が英語を勉強し始めるまでにだいぶいろいろ脚色が入ってます。実家を甲府に置いとくにしても、原案を生かす形で家族との関係性を作れなかったものか……と思ってしまいます。

それはともかく、実際の村岡花子さんは、相当才能があった上に相当努力して勉強して、日本文学史に残る(教科書に出てくる)文学者と交流して、さまざまな苦労をしつつ戦争を乗り越えて翻訳や通訳をされたそうです。ドラマはだいぶ創作に寄っているのでネタバレ?にならない程度に驚いたことを書くと、初恋の人があの施設の関係者!?とか、「ノンちゃん雲に乗る」の石井桃子さんとも交流が!とか(もっとどっさりいろいろな人が出てくるんですが)、めちゃくちゃすごい人だったんだなー……ぽかーん……という気持ちになりました。

一番驚いたのが、自分の出身学科(図書館学)の第1期の人がしれっと登場したことでした。お名前は浅学にして存じ上げなかったのですが、戦後に創設された歴史は一応習ったことがあったので、こんなところでご縁が!と。自分自身は学問に対しては何かなし得ることはなかったのですが、図書館学に触れて興味を持ち続けるきっかけになったり、図書館のはたらきを知る機会になったりして、ものすごく遠いつながりだけど、自分の好きなもの同士に接点があったことがとてもうれしかったのでした。

さて「花子とアン」はどうなっていくんですかねー。現時点でのあらすじを見た段階で、既にかなーり原案と離れていることが予測される(あと、たぶん納得いかない人が山ほど出る)ので、正直お話としてはだいぶ不安が。でもドラマそのものは楽しく見られているので、引き続き周辺知識を仕入れつつ、視聴していきたいと思います。